竜頭蛇尾
「失礼します。
元帥、御所望の書物がお届きのようですがどちらへ…」
「その辺に適当に置いといて下さい!」
「し、失礼しました!」
イライラする。
あの男のへらっとした笑顔。
なんですか、あの態度。
いつもいつもいつもいつも。
珍しく座れるようになっていた執務用の椅子に深く腰掛け、足を組み、読みかけていた本を開く。
どうせ、内容なんて頭に入らないけど。
「よぉ。」
ノックと共に声がかかる。元凶のお出ましですか。
「…なんの御用ですか。」
「上官に向かって随分な御挨拶で。…入るぞ。」
「入室を許可した覚えは無いのですが。」
顔も見ずに言い放つ。
「じゃ、大将権限だ。」
飄々とした物言いが更に気分を悪化させた。
「そういうのを職権乱用というんですよ。プライバシーの侵害です。」
「職権乱用はお前の得意技だろうが。それに、執務室はプライベートルームじゃねぇだろ」
「職権乱用が僕の得意技なんでしょう。
職務室をプライベートルームにしてたとしても何もおかしいことは無いじゃないですか。
なんの御用ですか。捲簾大将殿。」
わけのわからない会話。
捲簾が呆れた顔をしているのは見なくてもわかる。
「おい…」
「用が無いなら退室願えませんかね。見ての通り、僕はこの本に集中したいのですよ。」
「こっち向けって。」
「部隊会議は先ほど終了したと思いましたけど。」
「天蓬、頼むからこっち向いてくれ。」
「泣き落としならその辺の女性にして下さい。
僕には通用しませんから。」
ぱらぱらとページをめくる。捲簾がじっとこちらを見ているのがわかる。
「優秀で酷く頭のキれる西方軍元帥様。優秀すぎるほど優秀な部下を持って当てにしまくってる頭の悪い大将にお知恵をお貸しくださいな…っと。」
「…人を莫迦にするのも大概になさい。
楽しいですか、僕を怒らせて。」
「楽しんでんのはテメェじゃねぇか。
自分トコの頭煩わせて楽しいのか、この阿呆。」
何を言うんですか、この男は。
ぶっ殺してやりたい。
「どうせ、本なんか読んでねぇだろ。」
…なんでそんなことが判るんですか。
読んでるでしょう、いつもどおりに頁捲ってるんですから。
本をひざの上に置いたまま、ポケットから煙草とライターを取り出し火をつける。
捲簾を相手にマトモな話をしようと思う僕が莫迦でしたよ。ええ。確かにね。
別に煩わなくてもいいじゃないですか。ちゃんと大将閣下の野生の勘とやらを動議として可決したじゃないですか。何の根拠も無い、成功するやら失敗するやら判らない案を。
せっかく僕が頭を冷やそうと軍議を早々に切り上げたっていうのに、何だって貴方はそうやって僕の神経を逆なでするんですか。
…ああ、そう。頭を冷やすんでした。
こんな男のためにわざわざ脳細胞すり減らすことは無いってんですよ。冗談じゃない。
「…おい、天蓬。天蓬様や〜い。」
我に返る。
途中までは確かに吸っていた煙草は、長い灰を作り、今にも落ちそうになっていた。・・・先日も、これで本の表紙に焦げ目を作ってしまったんでしたっけ。
「…まだ居たんですか。」
溜息混じりに答える。
「まだ居たって…来たばかりじゃねぇか。
茶ぐらい出せ。」
「ありませんよ、そんなもの。
欲しけりゃ勝手に煎れたらどうです。」
「・・・わかりましたよ、っと。」
本の森を掻き分け、お茶を入れにいく。
一見、粗野な印象を受けるこの男は案外手先が器用で、僕好みをお茶を慣れた手つきで煎れる。
「ん」と茶杯を寄越した。
「その辺に置いといて下さい。」
お茶を置いてどこか開いたスペースへ座るのを待った。
が、気配が傍から消える様子が無い。
「…なんですか。」
「すまなかった。」
………は?
「悪かったって、言ってんだよ。はとが豆鉄砲食らった様な顔すンな。」
再び、ん、といって茶杯を差し出す。
全く、貴方って人は…。
「用向きは、それだけですか。」
「それだけ、って…おい!」
「終わったなら、出て行ってくださいね。
僕はこの本に集中したいんですよ。」
「いや、だから…」
「いいんですよ。」
「…なにが。」
「貴方は真っ直ぐ前をだけ向いて自分の道を進んでくれればいいんですよ。
背中を守るのは、副官である僕の役目ですから。」
一瞬、驚いた顔を見せる。
それも失礼な事だとわかってるんですか、捲簾。
「…じゃあ、安心して一眠りしてくるか。」
口角を上げていたずらっ子のように笑う。
「言っときますけど、職務外については御自分の責任でお願いしますよ。プライベートまで貴方とべったりなんてご免です。」
はいはい、と手を振りながら開いたスペースへ座り込んだ。
…貴方の睡眠を守ることまで僕の職務内ってことですか。いい度胸です。
沸いたお湯は、そのまま放置していても冷まし湯になるっていうのに。
わざわざ冷やしに来るあたり、貴方も物好きですね。
わかった。うちの八戒さんと元帥の違い。
元帥の喋りは普段から、どこをどうとっても金太郎飴みたいな
感じで慇懃無礼なんだ(笑)
八戒さんは、ほとんどが心底丁寧語だけど(笑)。
というわけで、唯織さん。
リク…こんなでしたっけ?(爆)<既に記憶も履歴もない(笑
)
つか、なんでリクもらうと長文になるんだろ。私(死)
タイトルは…まんまですな(死)